2020年5月「安否確認」その3
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さすがプロユースの DENON DL-103 は正常に動いた。それどころか
2020年現在も販売を続けているようだ。違っているのは、デンオンを今はデノン
と発音するらしい。これにはちょっと抵抗あるが・・・。
そしてイコライザーアンプも現役バリバリてあることも分かった。私の身の回りの
いろいろな物が、時の流れで価値を失ったり、使用不能になったりしたため、ちょっ
と心配性になっていたのかもしれない。落ち着いて考えると、アンプ作製に使用した
パーツは、高信頼の物を多く使い、1/4W型で済むところをわざわざ1W型抵抗を
用いたり、コンデンサーの耐圧も高めの物を使用した余裕のある仕様だ。少し警戒感
を緩め、残りのアンプのテストを行った。
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UX-45 シングルアンプ 状態:異状無し(ガリオームの難あり)
回路構成概略
初段 UY-76
2段 UZ-42 三極管接続
出力段 UX-45 シングル(交流点火・固定バイアス)
OPT TANGO FW20S
電圧チェック
シャーシは開けずに、整流管以外を外し、真空管ソケットで測定。
B電源・・・異状無し
ヒーター及びフィラメント電源・・・異状無し
出力段BIAS負電源・・・異状無し
電源offの後、各真空管をセット、BIASを最大値にセットして電源投入。
BIAS調節ツマミを回して 45 のプレート電流を35mAにセット。
ハムバランサーの可変抵抗を調節、ハム音最小の位置にセット。
以上で音出しチェックの準備完了。
3C33アンプとVT-62アンプは電圧チェックを省き、目視チェックのみでいきなり電源を投入した。
どちらも半導体を一切使用していない。抵抗とコンデンサー、真空管とトランスだけで組んでいる。
回路にはガラスと金属、絶縁体意外はないから、経年劣化の恐れはないと推測したからだ。
イコライザーアンプではケースを開け、電圧をチェックした。心配したのはダイオードだった。
心臓部は金属とシリコンだが、それを包んでいるのが合成樹脂たから心配したわけだ。
この 45 アンプは出力段のマイナス電源にダイオード使っているが、異常は無かった。
ダイオードに経年劣化の心配が無いのなら、残る4台の内3台は現役バリバリの可能性大だろう。
最後の一台は改良中、中途で放置状態になったので、まずその作業を終えてからチェックの予定。
音出しチェック
小編成の音楽を聴くには最適かもしれない。トランスドライブのVT-62アンプに比べると、こちらは通常のCR
結合のためか、楽器の分離が良い印象で、奥行きも感じられる。
小編成向きとは書いたが、オーケストラがダメと言うわけではない。東京の住宅事情を考えたとき、年がら年中
コンサートホールS席の音量を出すわけには行かない。だから実用上、最大出力1.5Wで十分と言えると思う。
このことは、最大出力2WのVT-62アンプ、その他多くののシングルアンプに言えることだが。
考えられる改良点
1.62アンプ同様、入力直後の普及品ボリュームを、アルプスのデテントボリュームに換装。
2.小型電源トランスを追加、6.3VフィラメントのVT-52を使用可能にする。
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6L6 または 6CA7 純五極管接続 プッシュプルアンプ 状態:異状無し
回路構成概略
初段 14F7
2段 14AF7 ミュラード型位相反転
出力段 6L6 プッシュプル(固定バイアス・純五極管接続)
VR-150 6267×2 6AS7×2 にてプレート用、スクリーングリッド用、定電圧電源×2
電圧チェック
シャーシは開けずに、すべての真空管を外し測定。
ヒーター電源・・・異状無し
出力段BIAS負電源・・・異状無し
電源offの後、各真空管をセット、BIASを最大値にセットして電源投入。
出力段 B電圧 350V SG電圧 270V にセット。
BIAS調節ツマミを回してのプレート電流を100mAにセット。
DCバランスの可変抵抗を調節、0位置にセット。
以上で音出しチェックの準備完了。
このアンプのコンセプトは「5極管の音は本当に悪いのか?」を確かめること。
6L6や6CA4などの真空管を純五極管接続として、メーカー指定通りの条件を与え、その音を確かめる。
プレートとスクリーングリッドに供給する電源は、それぞれ独立した定電圧電源としてみた。
出力段BIAS調整、DCバランス、B電源電圧、SG電源電圧を可変抵抗で調節可能である。
だから安否確認テストは簡単に済み、出力管は多種のものが試せる、実験機的性格のアンプである。
音出しチェック
このパワーアンプで初めて入力直後の可変抵抗に、アルプス電気のデテントボリュームを使った。
だからガリオームの心配は無く、可変抵抗によるノイズは皆無だった。
残念ながら「5極管の音は本当に悪いのか?」については分からない。本気でテストしたのは30年前だ。
記憶では、無帰還ではややキンキンした音に感じたと思う。この状態だとこのアンプは高感度過ぎて、
音量ボリュームの常用位置が、時計の八時付近になってしまう。だから音質改善のためというより、
感度調節のために、OPT二次側から初段のカソードへ、6だったか12dB負帰還をかけて完成させた。
その状態できいているからかも知れないが、今聴いても三極管との音質の違いなど分からない。
とにかく良い音だ。平日の昼間、コンサートホールS席の音量でブルックナーのシンフォニーを流す。
退職前は絶対にできなかったことだ。出力管に何を使うか、B電圧、BIASをどうするかにより変化するが、
最大出力15~20Wクラスのアンプだから安定感が違う。
考えられる改良点
1.出力段にカソードフィードバックをかけてみる。(現時点でその必要は感じないが)
2.三極管6B4Gを刺したときのため、ヒーター配線にハムバランサーを追加。(内部を見ないと分からないが)
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PX25 または AT-20 シングルアンプ 状態:異状無し
回路構成概略
初段 6SN7 SRPP
2段 6SN7 SRPP
出力段 PX25 シングル(固定バイアス)
VR-150 6267 6AS7×2 にて定電圧電源
電圧チェック
シャーシは開けずに、すべての真空管を外し測定。
ヒーター電源・・・異状無し
出力段BIAS負電源・・・異状無し
電源offの後、各真空管をセット、BIASを最大値にセットして電源投入。
出力段 B電圧 350Vにセット。
BIAS調節ツマミを回してのプレート電流を90mAにセット。
ハムバランサーの可変抵抗を調節、ハム音最小の位置にセット。
以上で音出しチェックの準備完了。
定電圧電源を使う必要は無いのだろうが、出力管が何であってもツマミひとつで対応できるのが便利だ。
と言っても、ヨーロッパ系のUFソケットなのと、フィラメント電圧が4Vと6.3Vの二択なので、
実際にはそれほど幅が広いとは言えない。UXソケットなら出力管の選択肢は大きく広がるが・・・。
音出しチェック
このパワーアンプも、アルプス電気のデテントボリュームを使っていから快適だ。
再生音の方は、45アンプと同じ傾向。分離が良く澄んだ空気を感じさせるように思う。
ただし、こちらの方が最大出力が大きいから、大音量時の安定感はややまさっている。
考えられる改良点
1.ソケットをUXに変更。(2.5V電源を加えれば 45 や 2A3 も使える。)
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6L6 または 6B4G UL接続 プッシュプルアンプ 状態:整流管の交換が必要
回路構成概略
初段 6SN7
2段 6SN7
インプットトランス
出力段 6L6GC プッシュプル(固定バイアス・UL接続)
電圧チェック
シャーシは開けずに、整流管意外の真空管を外し測定。
B電源・・・異状無し
ヒーター電源・・・異状無し
出力段BIAS負電源・・・異状無し
電源offの後、各真空管をセット、BIASを最大値にセットして電源投入。
出力段 BIAS調節ツマミを回してのプレート電流を120mAにセット。
DCバランスの可変抵抗を調節、0位置にセット。
作業途中でトラブル発生、電源off チェック中断。
写真を撮っていると、パパッと整流管が白く輝き、電流計の針が下がっていく。
もう一度整流管を見ると、片側のプレートが赤熱している。5AR4が死んだ。
急いで電源を切った。
5~6本買ったはずの5AR4のスペアが見当たらないので、テストの続行は補充してからになる。
だが、整流管の5AR4を交換すればこのアンプも正常に動作すると思った。
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ここまでの安否確認が済んだとき、五月もあと少しで終わる頃になっていた。まず
トーンアンプの修理だ。そのあと未チェックの2台のアンプを修理したい。しかし、
改めて考えてみると、プロ用、医療用、軍用の機器やパーツは凄い。自作したアンプ
達9台のうち6台がそのまま動いた。残る3台も修理可能だ。
少なくてもこの25年間、一切触っていない。完全に放置状態だった。中でも一番
古い VT-62 アンプは、完成から40年間無故障である。シャーシを開けたこ
とは一度もない。何十年も放置したのに、いまも以前と変わらずに期待に応えてくれ
た。そのようなものを、2020年現在、手に入れることは出きるのだろうか?
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