「500円で買ったレンズ」AUG.2020 その1
その1->その2へ->その3へ
ベローズユニットの修理
2013頃、中古カメラ店に、引き延ばしレンズが数多く出回るようになった。フ
ィルムカメラが優位性を示す分野は、もはや何もない時代に入ったと感じた。アマチ
ュアが白黒写真の現像と焼き付けを自ら行う・・・持ち主は、写真の世界に深いこだ
わりをもち、自分の理想を追求してきたのだろう。そうでなければ高価な現像や焼き
付けの機材を揃えたりはしないと思う。それを手放す時の持ち主の気持ちはどうだっ
たのだろうか。
2020年4月、私はカセットテープデッキ、TEAC C-2とC-3を廃棄し
た。二台とも20万前後の高級品だ。時代に置き去りになり、無価値になった過去の
優秀な機材だ。引き延ばしレンズの持ち主たちも、同じ思いだったのだと思う。
2013頃出回った引き延ばしレンズの値段だが、おおよそ300円くらいから、
高くても2,000円未満だった。焦点距離は50mm,75mm,90mmくらい。
明るさが必要な訳ではないから、絞り開放で3.5~5.6のものが多かった。例外
的に高かったのは、EL-NIKKOR 50mm/2.8 だった。
かわいそうなので店で見つけたとき、光学系が綺麗なものは、500円などという
安値もあって、目的もなく買ってしまう。いつのまにか7~8本になっていた。これ
らの引き延ばしレンズのマウントはL39で、当然ヘリコイドはついていない。実際
にカメラに装着し撮影するには、L39->M42変換リングをねじ込み、PENT
AXのベローズにつけて撮影していた。
2015夏、そのベローズが壊れた
-------------------------------------------------------------------------------------------------
PENTAX BELLOWS UNIT
西日の当たる窓際に置いてあったのが悔やまれる。使おうと手に取ると、蛇腹がまっ二つに裂けてぶら下
がっていた。中古カメラ店てもあまり見かけなくなっていたから、見つけるのに時間がかかる。破けた蛇腹
を取り去るには、ベローズを最短に縮め、内側の四隅にある2mmのビスを外すことで簡単に外れた。蛇腹
両端近く、2回折ったあたりに、0.3mm厚くらいの真鍮板が入っていて、その四隅に2mmのビスを通
す穴が開いていた。構造と組み立て方が判明したので、思い切って蛇腹を作ることにした。
材料は黒の色画用紙。雨に濡れたらイチコロなので、折り目を付けた後、黒のアクリル絵の具で表側を塗
装(2度塗り)する。
アクリル絵の具は耐水性で堅牢な塗料だが、所詮
内側は紙でしかない。耐久性には不安が残る。だが
考えようによっては、「また破けても何度でも作れ
ば良い」訳だから、長寿命になったとも言える。
手間掛けついでに、今までストレスを感じていた
マウントも変更することにした。PENTAX
BELLOWS UNITは、レンズ側、カメラ側
両方がM42マウントで、カメラに装着するとき、
ねじ込まなければならない。そうするとペンタプリ
ズムの、前方に突き出している部分と干渉する。
これをKマウントに変更できればかなり使いやす
くなる。カメラ側のM42マウントは真鍮製。ベローズ後部、4mm弱の深さまで挿入され、左右の芋ネジ
2本と、上部の手回しネジで固定されている。まずM42マウントを金ノコで切り落とし、フライスで平坦
に加工する。廃品のMレンズからKマウントを取り外す。追加が必要な材料・工具は、1mm厚真鍮板、
ドリル刃、バカ穴用2.1mm、M2下穴用1.6mm、M2タップ。
1995年以来、金属加工では毛書きはパソコンでやっている。ソフトは、Gimp と Libre Office
ノーカットのラベルに印刷、平坦に加工したマウント基部と真鍮板に貼り付ける。
上の写真右が1mm厚真鍮板、左上がマウント基部。左下が廃棄レンズから取ったKマウント。マウント
基部より径がかなり大きい。真鍮板もこの大きさに合わせる。真鍮板には2.1mmバカ穴4個、マウント
基部には1.6mm下穴4個空ける。
ハンドニブラーで真鍮板を切り抜き、外周をヤスリがけ、Kマウント座にピタリとハマるようになったら
油性ペンでネジ穴をなぞる。1.6mm穴を空け、タップを切る・・・ちょっと待て、同じ方法でニコンの
Fマウントも行けるじゃないか! Fマウント座の方は、レンズ側に突起があり、これを平坦にする必要が
あった。下の写真左が平坦にしたFマウント座、右がM2ネジを切ったマウント基部。
もう一枚真鍮盤を加工してNIKON用を作る。
レンズ側:左がPENTAX用、右がNIKON用
カメラ側:左がPENTAX用、右がNIKON用
これでこのベローズは、M2ネジ4本の着脱で、PENTAXとNIKONどちらのカメラでも使えるよ
うになった。PENTAX用のベローズは他にいくつか手持ちがあるので、NIKON用として組み立てた。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
ヘリコイドを持たない引き延ばしレンズを使うには、焦点調節のためのベローズな
どが必要になる。修理が出来たことは大きな収穫だが、直したベローズで無限遠まで
焦点を合わせることが出来たのは90mmまでだった。75mm以下だと無限遠では
合照しない。最低でもあと15mm、出来ればあと25mm、カメラ側でレンズを保
持できるベローズがあれば無限遠の写りが確認できるのだが・・・。
親ページに戻る その1->その2へ->その3へ